私は教育現場にいた際、「子どもは褒めたらいいんだよ」と言う言葉をよく耳にしました。
あなたも、
- 褒めるか叱るかだと褒める方がいい
- 1回叱ってしまったら2回褒めたらいい
と思いませんか??
ただただ褒めるばかりの子育て・教育をしていれば、他人を意識して行動するクセがついてしまいます。
そこでこの記事では、効果的な褒め方について私の教員経験をもとに解説していきます。また、逆効果になる褒め方についても解説しますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
- 効果的な褒め方が理解できる
- 子どもとのうまい関わり方が理解できる
子どもは褒められるために動いている?!
他人に動かされていた?!
「子どもは褒めて伸ばすべきだ!」と訴える人は多くいます。しかし、ただただ褒めて育てると子どもは「褒められるために行動する」ようになってしまいます。
例えば、子どものころボランティアで掃除をしに行ったとします。掃除し終わった後、誰にも何も言われなかったら、何かモヤモヤした気持ちになりませんか?もちろん、褒められるために掃除をするわけではないのですが、「褒められないことに違和感を感じた」経験がある方は多いでしょう。
このように、知らぬ間に「褒められたい!」という他者からの承認を求めてしまうことはよくあります。
このような、「褒められたい」という外からの動機を外発的動機と言います。逆に、自分の内側からの動機で行動することを内発的動機と言います。
内発的動機は、好奇心や探究心がもとになっていることが多いです。逆に外発的動機だけで動いていたら、見返りを求めてしまうようになります。
ここで、うまく外発的動機から内発的動機に移行させるかが大切です。
「褒められるために」から「自分のために」へ
例えば、子どもが親から「この宿題を終わらせたらお菓子をあげるよ」と言われて全く興味のなかった宿題をすることになったとします。この段階では、まだ外発的動機によりやる気が生じているところです。
そして宿題をする中で、「宿題頑張っていて偉いね」という承認をします。すると、最初は強制的な心理から宿題を進めていた子どもが、途中から「意外と勉強は面白いかも」という感情を持ち始めます。
そして、最終的には自分から進んで勉強をし始めます。このように子どもへの働きかけ次第で、外発的動機から内発的動機へと移行させることができるのです。
できなかったことにも価値がある!
私の教員時代、クラスの児童を褒めると子ども達はすごくいい表情をしてくれました、また、褒めることでその行動を繰り返し行ってくれるようにもなりました。
しかし、褒められることに慣れてしまった子ども達はできなかった時を避け、隠すようになってしまいます。
例えば、私のクラスのいわゆる優等生の子は「いつもテストで100点を取るとお母さんから褒められるからがんばるんだ!」といつも勉強を頑張っていました。しかし、ある日のテストで90点をとり、そのテストをこっそり破り捨て教室のごみ箱に捨てて帰ろうとしていました。
このままでは、100点のうちの90点も取れたことの肯定感、また、残りの10点を次はどうすればとれるかを分析する力を失ってしまいます。この残りの10点のようにできなかったことにも価値はあります。
このように、子ども達が善なる結果を褒められると、褒められようと頑張りはするものの、できなかったときを避け、隠すようになってしまうのです。
大人の言われるがままに…
逆に厳しくしてしまうと、子ども達は注意されないために行動し始めます。
私は、2年生の担任を持ったことがあるのですが、1年生の頃担任の先生が厳しい先生だった子どもは最初の頃、「この先生だったら怒られないし大丈夫か」と、大人の様子を見ながら悪さをすることがあり大変でした。
もちろん、私の指導力不足もありますが、特に厳しくされてきた子は大人によって対応を変える様子が顕著に表れていたのです。
このように、
- 「なぜこのようなことをするのか」
- 「なぜこのようなことはしてはいけないのか」
と考える前に大人に正されると、子どもは思考力を働かさずに行動します。
【これはNG】逆効果になる褒め方
以上の点から、「褒める」という一見いいことづくしのものにも安易に使っていると失敗してしまうケースもあることがわかります。
逆効果になる褒め方は下記の3つが挙げられます。
- 褒め言葉だけを伝える
- 相手を動かそうとする褒め方
- 結果だけを褒める
褒め言葉だけを伝える
「褒め言葉のさしすせそ」というのが流行ったことがありましたよね。
- さ…さすが
- し…知らなかった!
- す…すごい!
- せ…センスいい
- そ…そうなんだ!
しかし、こういった一言の褒め言葉は、社交辞令と捉えることが多くないですか?特に優秀な子どもは周りの大人からよく褒められるため、褒められ慣れています。そんな子は、一言褒められたからと言って心は全く動きません。
私も教員をしている頃、教員をしていることを初めて会う方に伝えると「すごい!」とよく言われましたが、正直「またかー」と言った感じでした。人間は繰り返されると慣れてしまう生き物です。
「すごいね」と言われて嫌な気持ちになる事はないかと思いますが、「本当にすごいと思ってる?」と疑いたくなりますよね。
相手を動かそうとする褒め方
次のNGな褒め方は、相手を動かそうとする褒め方です。
これは、大人が子どもによくしてしまうパターンです。安易に「すごいね」「さすがだね」と言っていれば、「この人はよく思われたいのかな?」と感づかれてしまいます。
実際、子どもの口からも「あの先生が褒めても嬉しくない」というようなことが出ていました。
結果だけを褒める
結果だけを褒めることもNGです。例えば、テストで100点をとってきた子どもに対して、「100点取るなんてすごいね!」と褒めることと、「勉強頑張ったんだね!」と褒めることでは大きく違います。
「100点取るなんてすごいね!」→結果しか褒めていない
「勉強頑張ったんだね!」→勉強を頑張るという過程を褒めている
結果を褒めると、結果が欲しくなりどんな手段も使うようにもなり得ます。
しかし、過程を褒めると、頑張りが増えます。どちらがいいかは一目瞭然ですよね。
効果的な褒め方とは
では、ここまでの話を踏まえて効果的な褒め方を紹介します。
- できる限り具体的に伝える
- Iメッセージで伝える
- 感謝を伝える
できる限り具体的に伝える
先述したように、これからは一言で終わる褒め方は避けましょう。
例えば、かけっこを速く走った子どもに対して、「速いね」や「すごいね」で終わるのではなく、「今まで走る練習をしてきて、大きく腕を振って速く走れていてすごいね」というようにできるだけ具体的に伝えましょう。
- 「何がすごいのか」
- 「何を褒めているのか」
これらを具体的に伝えれば伝えるほど、相手を動かそうとする印象が下がります。具体的なほど、「あなたのことを見ているよ」という承認にもなります。
Iメッセージで伝える
Iメッセージとは、何かを伝えるときに「私は…」を主語にして主張するメッセージです。Iメッセージにすることで、相手のテリトリーを守りながら伝えることが可能になります。
逆にYOUメッセージは、主語を「あなたは…」とすることです。YOUメッセージにすると、相手を支配する表現になってしまいます。例えば、「(あなたは)すごいね」と褒めるのは上下関係がはっきりした場面で使われますよね。20代の方が、40代の方に「(あなたは)毎日通勤していてすごいですね。」という事は滅多にないでしょう。
しかし、Iメッセージで伝えると「(私は)あなたが毎日通勤していてすごいと思います。」となります。Iメッセージだと、言われた方も相手が勝手に思っていることに対して踏み込もうとは思いません。
このように、「私は…だと思います」とIメッセージで褒めましょう。
感謝を伝える
最後に、褒めるとは少し違いますが、「感謝を伝える」ということを紹介します。
子どもとの関係を縦の関係で見てしまっていると、気づけば賞罰教育になってしまいます。褒めたり厳しくすることは能力が上の人が行いますよね。
教員2年目の教員が、20年目のベテラン教員の授業を見て、「頑張って授業していて偉いね!」と言うのも、「全然だめです。もっと頑張ってください!」というのもおかしいですよね。子どもとの関係を自然と大人が上と思っていると、このように賞罰教育しか行えません。
そこで、子どもとの関係を横の関係で見ましょう。横の関係の人が何か良いことをするとどうしますか?「ありがとう」と、自然と感謝しますよね。
このように、子どもにも感謝の思いを伝えることが一番大切なことです。
まとめ
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、「褒める」について深掘りして記事にしてみました。安易に褒めることだけをしている人が多い中、「褒められるために」行動している子どもが多くなっています。
そこで、
- できるだけ具体的に伝える
- Iメッセージで伝える
- 感謝を伝える
という効果的な褒め方を紹介しました。
どれも、今すぐにでも実践できる簡単なものになっています。また、子ども相手だけでなく、部下や後輩、友達や恋人などにも効果はあります。
あなたも明日から実践し、未来ある人間関係を築きましょう。